シュバルツバルドの辺境にフィゲルという街がある。土地のものしか知らない道をずっとたどった外れにあるやや小さな街に、シュバルツバルドの企業、飛行船を運行するレッケンベル社が飛行船の停留所を設置すると発表した。オーディン神殿という、シュバルツバルドの隣国であるルーンミッドガッツで信仰される聖地と似た地の近くにある街だ。
外部との接触がほとんどないまま暮らして来た人々は、シュバルツバルドの他の都市とは違いレッケンベル社の影響をほとんど受けていなかった。目の前には孤立がある。それほど閉鎖的な環境なのに、住人は明るかった。遠くから来たものたちは皆喜んだ。目指す場所は違っていたはずなのに、道に迷ってたどり着いた地が目的地よりずっと平穏な都市だとしたら、誰が他の地へわざわざ行くだろうか。それもこれ以上進むべき道がない人々ならもっと・・・。